働く人たちの座談会

千歳会本部

 

 

介護の仕事のおもしろさややりがいについて、それぞれの場所で活躍するスタッフに聞きました!

 

 

~プロフィール~

池内 香奈子さん(いけうち かなこ)

ケアハウス こまち墨田館の介護職員。今後仕事でやってみたいことは、ご高齢の方に向けた食育活動。

 

蓑茂 恵生さん(みのも けいせい)

特別養護老人ホームちとせ北本の介護職員。今後仕事でやってみたいことはふわふわの動物たちを施設に呼んで、お客様と触れ合う機会をつくること。アニマルセラピー。

 

アルフィアニ・ヌル・シャリハさん

特別養護老人ホームちとせ稲毛の介護職員。今後やってみたいことは、特養とデイの間のような、特養にいながらレクができるしくみづくり。

 

 

 

――千歳会の入職歴とお仕事の内容を教えてください。

 

池内 2017年にこまち墨田館ができたときに入職したので、7年目です。ケアハウスの介護職として、自立したお客様(要介護のある方も)の生活をお手伝いをしながら、より質の高いサービスを提供したいと日々精進しています。

 

蓑茂 特別養護老人ホームちとせ北本で介護職をしています。入職して2年半くらい。主に、自立支援を行うユニットで、フロアリーダーをやっています。

 

アルフィ 特養のちとせ稲毛で、介護職として働いています。千歳会へ入ってまだ間もないですが、現在は、介護福祉士の資格取得のために勉強をしています。

 

蓑茂 アルフィさんはどちらのご出身ですか?

 

アルフィ インドネシアのジャワ出身です。……丁寧じゃない日本語かもしれません。すみません。

 

池内 そんなそんな! 母国語でない日本語を勉強しながら、資格取るために頑張ってるんだもんね。頭が上がらないわ。

 

 

 

 

――いまのお仕事に就く経緯やきっかけは?

 

池内 以前は営業事務の仕事をしていて、介護の世界には縁がありませんでした。たまたま知り合いが墨田館の立ち上げに関わることになり、声をかけてもらったことがきっかけです。ケアハウス建設当初から、左理事長が夢を語っていらして。スタッフもみんなキラキラしていたのが印象に残っています。経験もなく入った介護の世界ですが、やればやるほど奥が深く、その魅力にすっかりハマってしまいました。

 

蓑茂 熊本県出身で、結婚して妻の実家がある埼玉県に来ました。とある求人誌を見ていると、働く人たちが笑顔で肩を組んでいる写真が目に止まって。「きっと楽しい職場に違いない」って、仕事を決めました。それが、介護の仕事だったんですよね。

介護職としてのスタートは有料老人ホームで、お元気な方が多い。もう少しケアの勉強をしたいなと思い、特別養護老人ホームであるちとせ北本へ転職しました。

 

アルフィ わたしは、おじいちゃんとおばあちゃんを60歳で亡くしました。今思い出しても悲しいです……。インドネシアは介護の制度が整っておらず、国民の寿命も短いんです。せめて両親には長生きしてほしいなと思い、介護の勉強を始めました。

 

蓑茂 日本の介護を学ぼうと思ったのはどうして?

 

アルフィ 日本の介護が先進的だというニュースで見たんです。高校卒業後、日本語を学ぶために日本に居たこともありましたから、日本には馴染みもありました。まずはインドネシアで、日本語の介護の本を買って読むことから始めました。

 

池内 立派! そこから、実際に日本で介護の仕事を?

 

アルフィ はい。まずは小規模多機能型居宅介護でデイサービスを担当していました。レクを考えるのは楽しかったです。でも、そのうちにもっと介護度が高い方をケアしたいと思うようになりました。蓑茂さんと一緒ですね。

 

蓑茂 そうですね。こちらが勉強することで、幸せにできるお客様を増やしたいって思ったんです。

 

 

 

 

――「介護の魅力」、どんなところにあると思いますか?

 

池内 いままでの私のイメージだと、お役所的なところなのかな? って思っていたんです。ちょっとお堅いイメージ。だけど、実際に中に入ってみて印象が180度変わりました。目の前のお客様のために何ができるだろう? もっとよくするにはどうしたらいいだろう? って常に希望をもって働いている人たちが多いんです。入った当時は資格もなくて、一から勉強して初任者研修をとりました。けど、千歳会での仕事に魅力を感じ、気づいたらこんなに長く働いていました。

 

蓑茂 なるほど。墨田館で池内さんが実際に体験したエピソードも聞いてもいいですか?

 

池内 自立した生活をされていた男性のお客様が、外で転んで入院してしまったんです。要介護認定もつき、自立生活が条件であるケアハウスの墨田館に戻るのは難しい、といったお話も出ていました。

けれど、お見舞いにうかがった際、「なんとしても墨田館に戻りたい」っておっしゃっていて、リハビリを頑張っていらしたんです。このシーンを見るだけで心を打たれました。そして、こちらが声かけやお話を聞くことで、お客様の顔が晴れたり、やる気が出たりすることがわかって。入院中にもなるべく顔を出すようにしました。墨田館では、お客様がいつ戻ってきてもいいように、スタッフと受け入れ体制を整えました。人と人が思い合う場所になっていると実感することができました。

 

アルフィー 素敵ですね。

 

蓑茂 それで、今は退院をして、墨田館で過ごされているんですもんね。素晴らしいエピソードをありがとうございました。

 

池内 蓑茂さんのエピソードも聞かせてください。

 

蓑茂 僕は、お客様へのケアはもちろんのこと、ご家族への気づかいも大切だと思っています。夏に、スイカ割りをやりました。その際に、男性のお客様が一生懸命にスイカを割ろうとされていて、「えい! えい!」と、何度もスイカを叩くシーンが見られました。後日、ご家族が面会にいらした際に、この微笑ましいシーンのことをお伝えすると、笑いが起こったんですね。「お父さん、家ではそんなんじゃなかったじゃない」って。そして、施設を後にする際に、こちらに向かって真顔でこうおっしゃいました。

「いつも『お父さん、無事かな?』ってここに来ていたんですが、そうじゃないんですね。楽しくやっていることがわかりました」

そして、今度は他の兄弟も連れてきますってお帰りになりました。僕は、これが介護の役割のひとつであると思うんです。ご家族が心配して施設に来るんじゃなくて、ゲラゲラ笑いながら帰ってほしいんですよね。笑うというのは、まず安心がないとできないこと。ご家族がお客様の話を聞いて、笑ってくださったとき、僕はこの方のケアが上手くいっていると思うんですよ。

 

アルフィー 素敵です! インドネシアは、昔の日本みたいで、まだ介護施設に対するイメージがよくありません。だから、日本でがんばって勉強して、その考え方をなくしたいですね。

 

池内 すごい! アルフィーさんだったらどんな施設をつくりたいですか?

 

アルフィー みんなが信じられる施設をつくりたいです。インドネシアのひとにはわかってほしい。高齢者が家にいたとしても、誰も看ないんだったら長生きはできないって。施設で生活することは、毎日会えなくなるけど、早く亡くなるよりはいいんじゃない? って思っているんですよね。

 

蓑茂 千歳会のジャワ支店ができるかもしれませんね……!

 

 

 

 

――蓑茂さんとアルフィーさんは医療ケアに近いところで働きたいということですが、医療と介護には、差や考え方に違いはありますか?

 

蓑茂 介護士と看護師ができることは法律でも分けられていて、治療のできるできないはあります。だとしても、ちとせ北本では、「介護」と「医療」の間に壁を感じたことはないですね。ナースが現場に入って、同じレベルで話し合いができる。他職種連携ができていて、介護チームからも提案できますしね。それに、看護チームも介護の知識をどんどんつけてくれてるんですよ。すごくやりやすいです。

 

池内 いいですね! 薬剤の知識はお互いにもっていたほうがいいこともありますもんね。

 

アルフィー ほんとは、看護師に憧れたこともあるんです。……内緒だけどね(笑)。だけど、ひとつのストーリーによって、その考え方は変わりました。

デイサービスで働いていたときに聞いたストーリーです。いつも来ているお客様が、なんだか普段と違う様子だったんです。その方は女性で、いつも綺麗にお化粧しておしゃれをしてデイサービスに通ってくるのですが、その日は髪もとかさずに、ボサボサの状態で来た。介護士が、今日はなんか違うなと気づいて、お客様にどうしたの? と尋ねると「腕を上げると痛い」って言うんですって。そこでピンと来た介護士は、病院にすぐ行ったそうです。それで、肺炎に罹っていることがわかったんです。結構危ないレベルだったそう。

私はこのストーリーを聞いて、毎日相手を見ている介護士さんはすごいなって。看護師の方がって比べるのは違うなと思いました。介護士も看護師も両方すごいって。

 

池内 そうだよねえ。こんな風に介護の人が気づいて、すぐ急患を出したから、この方の命は救われてってこと、本当にたっくさんありますよね。「ベッドで打っちゃった」っておっしゃっていて、そこまで大きな傷になっていなくても、「痛い痛い」と言っていて、病院に連れて行ったら骨が折れていた……とかね。

あと、介護士のできることとして、心のよりそいが今大事だと思っています。心が健康じゃないと身体も健康にならない。

 

アルフィー 長生きはもちろんだけど、生きていくうえで楽しくないと。

 

池内 そうそう! 楽しく。食事もただ与えているわけじゃないんですよね。ここに来て、心のケアが大事だなって思って、心理学を勉強して民間の資格を取ったんです。高齢の方だけじゃなく、心の問題っていま社会問題にもなっているでしょう? 私たち働く人にもいえることです。心の状態がよくなれば、多少大変なことも一緒にがんばれたり、モチベーションが上がって、結果お客様へのケアの質も上がっていくはず。そうすれば、介護施設がもっと頼りがいのある場所になると思うんですよね。

 

蓑茂 池内さんおっしゃるように、食事量ってその日の気分によって全然違うし、気分がよければ、今日は歩いてみようかなって行動も変わりますよね。将来的にその方のADL(日常生活動作)をどこまで残せるかに、メンタルってすごい関わってくると思います。

アルフィーさんの話に戻ると、僕たちは普段の姿を見られるから、病気の前兆にも気付ける。病気を防いでいるから目立たないんだけど、重要な役割を僕ら介護職は担っていると思いますね。

 

 

――みなさん、ありがとうございました!