【歩行改善】杖に頼らない?足が滑る? 脳科学に基づいた「歩くための3つの秘密」

デイサービスセンターちとせ

こんにちは、デイサービスセンターちとせです。

皆様こんにちは。 
理学療法士の上田知成です。
 
え込みが続く毎日ですが、リハビリ中の皆様の笑顔に元気を頂いています。
今月も楽しく体を動かしましょう!
 

当デイサービスでは、脳卒中(脳梗塞や脳出血)の後遺症で、

片麻痺(半身麻痺)があるご利用者様のリハビリに力を入れています。

「もう一度、自分の足でしっかり歩きたい」 そんな願いを叶えるために、

私たちはただ漫然と歩くのではなく、

「脳の仕組み」と「体の反射」を利用した、少し特殊な歩行トレーニングを行っています。

 

今日のブログでは、動画でご紹介している歩行訓練の中に隠された、

「3つの工夫」について解説します。

一見すると「えっ、杖を使わないの?」「足を滑らせるの?」と不思議に思われるかもしれませんが、

すべてに医学的な理由があるのです。

① なぜ、あえて「杖を使わない」のか?

 ~脳の「綱引き」バランスを整える~

 通常、足元のふらつきがある場合は杖を使いますよね。

 しかし、私たちのリハビリ場面では、あえて「元気な側の手で杖を使わない」ことがあります。

 

 これには「脳の半球間抑制(はんきゅうかんよくせい)という難しい仕組みが関係しています。

 少し想像してみてください。人間の脳は右と左に分かれていて、お互いに連絡を取り合っています。

 脳卒中で片方の脳がダメージを受けると、元気な方の脳が頑張りすぎてしまい、

 ダメージを受けた脳に対して「お前は休んでいろ!」と、

 活動を抑え込んでしまう現象が起きることがあります。これを「抑制」と呼びます。

 

 もし、リハビリ中に元気な手で杖を強く握りしめて頼りすぎてしまうと、

 元気な脳ばかりが働いてしまい、麻痺している側の脳がいつまでも目覚めてくれません。

 そこで、私たちは安全を確保した上で、あえて杖を使わず、

 「麻痺している側の足にしっかり体重を乗せる」ことに集中してもらいます。

 これにより、眠っている脳を「起きて!出番だよ!」と叩き起こし、回復を促しているのです。

② 「一定のリズム」が歩くスイッチを入れる

 ~体に備わった「自動歩行プログラム」~

 次に、動画の中で私が「はい、イチ、ニ、イチ、ニ」と声をかけ、

 「一定のスピード」で歩くように誘導していることに気づきましたか?

 実は、人間の背骨(脊髄)の中には、「CPG(歩行誘発野)」と呼ばれる、

 歩行のリズムを作る「自動スイッチ」のような場所があります。

 

 皆さんも、考え事をしながらでも歩けますよね? あれは、脳が細かく指令を出さなくても、

 一度スイッチが入れば脊髄が勝手に「リズムよく足を動かせ」と指令を出してくれているからです。

 脳卒中後のリハビリでは、ゆっくり慎重に歩きすぎると、かえってこの「自動スイッチ」が入らず、

 カクカクとしたぎこちない動きになりがちです。

 

 そこで、私たちが誘導して一定のリズムとスピードで歩いてもらうことで、

 脊髄にあるスイッチをONにします。そうすることで、無意識に近い感覚で、

 なめらかに足が出るように練習しているのです。

③ 「足を滑らせる」魔法の工夫

 ~悪いクセがつくのを防ぐ~

 最後の工夫は、足元です。麻痺側の足の下に、滑りやすいシートなどを敷いて練習することがあります。

 麻痺があると、どうしてもつま先が上がりにくくなります(下垂足)。

 その状態で無理に歩こうとすると、つま先が地面に引っかかるのが怖いため、

 無意識に以下のような動作をしてしまいます。

 ・腰を大きく引き上げる

 ・足を外側に大きくぶん回す(分回し歩行)

 一度この「代償動作(だいしょうどうさ)」と呼ばれる変則的な歩き方のクセがつくと、

 修正するのは大変です。変な歩き方は膝や腰を痛める原因にもなります。

 

 そこで、私たちは「足先だけを滑りやすくする工夫」を取り入れています。

 あえて床との摩擦を減らし、スケートのように足がスーッと前に出る環境を作ります。

 こうすると、つま先が引っかかりません。

 「引っかかるかも」という恐怖心を取り除くことで、足を外側にぶん回したりせず、

 「まっすぐ前に足を出す」という正しい軌道を脳と体に覚えてもらうのです。

 

最後に

 いかがでしたか? 動画の歩行訓練は、ただ歩いているように見えて、

 実は脳科学と運動学に基づいた緻密な計算の上に行われています。

 1.脳のバランスを整えるために、杖に頼りすぎない。

 2.脊髄のスイッチを入れるために、リズムよく歩く。

 3.変なクセがつかないように、足を滑らせて正しい軌道を描く。

 この3つを組み合わせることで、私たちは利用者様が「きれいに、楽に」

 歩けるようになる日を目指してサポートしています。

 

 「もっと詳しく知りたい」「実際のリハビリを見てみたい」という方は、

 ぜひお気軽に見学にいらしてください。一緒に、可能性を広げていきましょう!

 

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